内容でも、結果でも上回りました。
「まけるな まけるな おうえんするよ」
試合の話に入る前に、この日のミクスタに流れていた空気のことを書かせてください。
10月13日、クラブが溝上トメさんのご逝去を発表しました。福岡県内最高齢として報じられた111歳の方で、サントリーウエルネスとJリーグの参加型プロジェクト「Be supporters!」を通じて、数年にわたってギラヴァンツを応援してくださっていました。
毎年、クラブに直筆のメッセージを送ってくださっていたそうです。2026年のメッセージが、これでした。
まけるな まけるな おうえんするよ
この日、選手たちはその直筆メッセージが入ったTシャツを着てピッチに立ちました。
そして試合後、田中遼太郎監督が総括のいちばん最初に、この話をしています。
今日は、ギラヴァンツ北九州のサポーターの一人である溝上さんのご逝去にあたり、応援していただけることがどういうことか、そのために我々ができることはどういうものなのかというのは、試合前にも確認して試合に臨みました
結果は3-1。勝ちました。
3,365人のミクスタ
2026年10月17日(土)14時、ミクニワールドスタジアム北九州。明治安田J3リーグ第11節、FC大阪戦です。
天候は晴れ、気温24.6℃、湿度47%。主審は國吉真吾さん。キックオフは14時04分でした。この日は『東邦チタニウムマッチデー』。
入場者数は3,365人。正直に書くと、これは今季のミクスタで最少です。
| 節 | 日付 | カード | 入場者数 |
|---|---|---|---|
| 第2節 | 8/15 | 讃岐 | 7,817人 |
| 第4節 | 8/30 | 松本 | 4,693人 |
| 第6節 | 9/12 | 鳥取 | 3,731人 |
| 第8節 | 9/26 | 鹿児島 | 5,433人 |
| 第9節 | 10/3 | 高知 | 12,707人 |
| 第11節 | 10/17 | FC大阪 | 3,365人 |
2週間前のギラフェスが12,707人でしたから(12,707人の前で、リーグ戦ホーム初勝利|北九州 2-0 高知)、その4分の1です。
でも、その3,365人の前で、上位相手に3点取って勝ちました。こういう日に勝てるかどうかが、たぶん大事なんだと思います。
先発は前節から2人変更
北九州の先発は、前節の奈良戦(0-2)から2人変更。坂下湧太郎と西村真祈が外れて、井澤春輝と吉田晃盛が入りました(シュート12対12で、0-2。奈良の5連勝はクラブ新記録だった|奈良 2-0 北九州)。
布陣は4-4-2。GK大谷幸輝、最終ラインは安光将作・神橋良汰・横窪皇太・福森健太。中盤に吉長真優、井澤春輝、平松昇、髙橋大悟。前に吉田晃盛と高昇辰。
対するFC大阪も4-4-2。監督は藪田光教さん。前節から1人変更で、森村俊太が外れて久保吏久斗が入っています。
FC大阪はこの試合前の時点で4勝5分1敗、勝点17。負けはたった1つで、しかもアウェイでも1勝3分2敗と、負けにくいチームでした。藪田監督は9月度のJ3月間監督賞、住田将は9月度の月間MVPを受賞しています。
24分、吉田晃盛のヘディング
先制は24分でした。
左サイドを崩してクロス。これに吉田晃盛がペナルティエリア内で合わせて、ヘディングでゴール右下へ。1-0です。
見ていて、吉長真優から安光将作へとつないで、安光のクロスという形に見えました。安光は左サイドバック、吉長は左のサイドハーフなので、配置としても自然です。
吉田晃盛本人が、このゴールについてこう話しています。
自分たちが入りやすい形で崩してくれたので、あとはもう練習通りです。ヘディングの練習もしていたので、練習通りにできたと思います
そして平松昇のコメントが、もっと具体的でした。
プレシーズンからずっと取り組んでいる、押し込んでポケットを取って、速いクロスに中が合わせるという形で得点を取れて、最初から取り組んでいることが出たシーンはあった
「プレシーズンからずっと取り組んでいる形」。偶然の1点ではなかった、ということです。
一方、FC大阪の藪田監督は失点の原因をこう説明していました。
スローインの準備の部分もそうですし、すべての準備が遅れていたと思います。相手についていくべきところでついていけなかったり、マークの部分でも対応が遅れたりと、準備の遅れがすべてだったと思います
前半のシュートは8対4
「悪くない序盤でした」という感覚、数字もそう言っています。
| 前半 | 北九州 | FC大阪 |
|---|---|---|
| シュート | 8本 | 4本 |
| 枠内シュート | 1本 | 0本 |
| ボール支配率 | 58% | 42% |
前半だけで見れば、FC大阪の枠内シュートはゼロです。
ただ、ひとつ面白い数字があって。20分の時点では北九州のシュートは0本でした。それが40分には7本になっています。20分から40分の20分間で、一気に7本打った計算です。
この時間帯のポゼッションも60%対40%。先制点の24分は、まさにその真ん中でした。
74分、髙橋大悟のPK
後半も、北九州は崩れませんでした。
そして74分(後半29分)。北九州のシュートがFC大阪の選手の手に当たってPK。キッカーは髙橋大悟です。
左足で、ゴール左上。2-0。
髙橋大悟はこれで今季リーグ戦4得点目。チーム最多です。
福森健太が、髙橋との関係をこう話していました。
大悟が良さを引き出してくれているというか、そんな感じです。僕は走るだけというか、あとは大悟が選ぶという感じだと思うので、相手が僕についてくれば大悟の左足がいけるだろうし、相手がそれをケアすれば僕が空くというような、常にどっちかという感じで、あとは大悟が選ぶだけって感じだと思っています
右サイドは、この2人で回していたようです。
79分、大谷幸輝がPKを止めた
ところが、その5分後。
今度は北九州がペナルティエリア内でファウルを取られて、FC大阪にPK。キッカーは島田拓海でした。
これを、大谷幸輝が止めました。
2-0のまま。大きい、と思いました。
ただ、本人の受け止め方は違いました。
止めた瞬間は「よし」と思いましたが、その後コーナーもあり、結局そのまま押し込まれた中で失点してしまったので。止めた瞬間は喜びましたが、失点してしまったので、そこは悔しいです
そう、このあと失点するんです。
82分、住田将に返される
PKストップの3分後、82分でした。
FC大阪が右コーナーキックを獲得。キッカーのボールに菅原龍之助がエリア内で合わせましたが、これも大谷がセーブ。しかし、そのこぼれ球に反応した住田将が右足でゴール右下へ。
2-1。
「こういうところで決めてくるのがFC大阪の上位たる強さ」という感想、まったくそのとおりだと思います。住田将はこの試合前の時点で直近5試合に4得点1アシスト、J3のチャンスクリエイト総数でもリーグ1位(21回)。9月度の月間MVPです。
大谷のセーブが2本続いて、3本目で決められた。そういう流れでした。
田中監督も、この時間帯について聞かれて正直に答えています。
あの時間帯、もちろんその前に取られたPKも含めて、こちらのベンチでの動き、狙い、そういったところで少し躊躇がありました。そこをどのように手を打っていくか
セットプレーが続いていたので、井澤春輝から坂下湧太郎への交代のタイミングが難しかったことも話していました。
84分、西村真祈。しかも元FC大阪
そして、その2分後です。
右サイドからの折り返しに対して、FC大阪のクリアが甘くなりました。そのこぼれ球に反応した西村真祈がペナルティエリア内から右足でゴール右下へ。
84分、3-1。
1点差に詰め寄られた直後で、残り時間はわずか。この3点目が、勝負を決めました。
そして、ここに物語があります。
西村真祈は、2024年から2年間FC大阪でプレーしていた選手です。セレッソ大阪のアカデミーから関西大を経てFC大阪へ。そこからブラウブリッツ秋田を経て、今年9月15日に北九州へ期限付き移籍してきました。
この試合は65分から吉田晃盛と交代で出場。そして84分に、北九州での初ゴールを決めました。古巣相手に、決勝点となる3点目です。
加入時の本人コメントが、こうでした。
開幕してから6節が終わり19位と苦しい状況が続いていますが、残り32節全ての試合に勝つその為に1日1日を全身全霊で生きていきます
坂本翔のサイドから
古巣対決は、もう一人いました。
FC大阪の右サイドバック、坂本翔。2023年から2025年途中まで、2年半北九州に在籍していた選手です。
そして試合後、本人がこう話しています。
2年半お世話になったクラブとの対戦で、自分もモチベーション高く試合に入れました。でも、古巣戦だからといって何かを変えるというよりも、自分がずっと同じモチベーションでやるという部分は意識して試合に入りました
そして、先制点についてこう続けました。
ボールタッチも少なかったですし、プレーに関わる部分があまりできなかったというのが1つと、自分のサイドからクロスを上げられての失点だったので、そこはチームメートとの連係の部分だったり、修正していけるところは多かったかなと思います
24分の先制点は、元北九州の坂本翔のサイドを崩して生まれた1点でした。こういう巡り合わせがあるのが、サッカーの面白いところであり、残酷なところでもあります。
数字で見る90分
試合全体のスタッツです。
| 項目 | 北九州 | FC大阪 |
|---|---|---|
| シュート | 13本 | 10本 |
| 枠内シュート | 3本 | 2本 |
| ボール支配率 | 53% | 47% |
| コーナーキック | 3本 | 6本 |
| フリーキック | 16本 | 9本 |
| 警告 | 0枚 | 2枚 |
シュート13対10、支配率53対47。そして枠内3本で3得点です。打った3本が全部入っている計算になります。
時間ごとの推移を見ると、この試合の形がよく分かります。
| 時間 | 北九州(枠内) | FC大阪(枠内) |
|---|---|---|
| 20分 | 0本(0) | 1本(0) |
| 40分 | 7本(1) | 4本(0) |
| 前半終了 | 8本(1) | 4本(0) |
| 65分 | 10本(1) | 6本(0) |
| 85分 | 13本(3) | 9本(2) |
| 試合終了 | 13本(3) | 10本(2) |
65分まで、FC大阪の枠内シュートはゼロでした。そして65分から85分の20分間に、両チーム合わせて6本の枠内シュートと3得点が集中しています。終盤が、全部でした。
なお、J.League公式の試合記録ではシュート数が北九州12本・FC大阪9本と、上の表(J.Leagueサイトのスタッツ=Opta集計)とは違います。PKの1本ずつを数えるかどうかの差のようです。本稿はOpta集計でそろえました。
警告が0対2というのも、地味に大きいところです。北九州はカードなしで、上位相手に3点取っています。
安光将作が来てから、何が変わったか
「安光が加入してからチームが変わったかのように動きがよくなった」という実感。
これ、数字がはっきり答えを出しています。
安光将作がRB大宮アルディージャから期限付き移籍で加入したのが9月16日。初出場はその4日後、第7節の相模原戦でした。そこで区切ってみます。
| 安光 加入前(第1〜6節) | 安光 加入後(第7〜11節) | |
|---|---|---|
| 成績 | 0勝3分3敗 | 3勝1分1敗 |
| 勝点 | 3 | 10 |
| 得点 | 7(1試合平均1.17) | 8(1試合平均1.60) |
| 失点 | 14(1試合平均2.33) | 5(1試合平均1.00) |
6試合で勝点3だったチームが、5試合で勝点10。
そして何より、1試合あたりの失点が2.33から1.00へ、半分以下になっています。
安光本人も、相模原戦・鹿児島戦・高知戦と3試合連続ゴールを決めました(加入4日でデビュー、1ゴール1アシスト。ようやくのリーグ初勝利|相模原 1-2 北九州)。センターバックが本職ではなく、この日は左サイドバックでしたが、今季5試合で3得点1アシストです。
もちろん、同じ9月中旬には西村真祈(9/15)と原康介(9/16)も加入しています。安光ひとりの力ではありません。
でも、「あのあたりから変わった」という実感は、完全に正しかった。数字がそう言っています。
吉田晃盛「自分の得点が初めて勝利に貢献できた」
先制点の吉田晃盛のコメントで、いちばん印象に残ったのがこれでした。
自分が得点を決めた試合で勝つことがなかったので、自分の得点が初めて勝利に貢献できたというのは本当にうれしいです
調べてみると、確かにそうでした。吉田晃盛の今季リーグ戦のゴールは、第6節の鳥取戦(2-4で敗戦)とこの試合の2つ。ルヴァンカップの名古屋戦(1-3)でも決めています。
決めても、勝てていなかった。それがこの日、ようやく勝利につながりました。
そしてもうひとつ。
前半にいい形で自分が1点決めれましたが、個人としては2点、3点取ることが目標だったので、チャンスもありましたし、そこを決め切りたかったです
勝った日に、この言い方ができる選手がいるのはいいことだと思います。
ミクスタではFC大阪に無敗。14位に浮上
FC大阪との過去の対戦を並べます。
| 日付 | 会場 | スコア |
|---|---|---|
| 2023/7/16 | ミクスタ | 北九州 0-0 FC大阪 |
| 2023/9/24 | 花園 | FC大阪 0-0 北九州 |
| 2024/3/20 | ミクスタ | 北九州 0-0 FC大阪 |
| 2024/10/19 | 花園 | FC大阪 3-2 北九州 |
| 2025/4/5 | ミクスタ | 北九州 1-0 FC大阪 |
| 2025/9/19 | 花園 | FC大阪 0-3 北九州 |
| 2026/10/17 | ミクスタ | 北九州 3-1 FC大阪 |
通算3勝3分1敗。そしてミクスタでは2勝2分で無敗です。相性のいい相手だったとも言えます。
この勝利で北九州は3勝4分4敗、勝点13。順位は14位です(※第11節は10月18日に4試合を残した暫定)。
| 順位 | クラブ | 勝点 | 得失点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 鹿児島ユナイテッドFC | 26 | +10 |
| 2 | 愛媛FC | 23 | +12 |
| 3 | 奈良クラブ | 23 | +6 |
| … | … | … | … |
| 7 | FC大阪 | 17 | +7 |
| … | … | … | … |
| 14 | ギラヴァンツ北九州 | 13 | -4 |
8位の金沢から13位の鳥取まで、勝点14に6クラブが固まっています。北九州はその1つ下。1勝で一気に順位が動く位置です。
それと、Optaが先制の直後に出していた数字がこれでした。
今季のリーグ戦、先制に成功した試合は5試合。2勝3分け0敗で勝率は40.0%
この勝利で3勝3分0敗。今季、先制した試合では一度も負けていません。
次は中3日、アウェイで福島
次節は10月21日(水)13時、とうほう・みんなのスタジアムで福島ユナイテッドFC戦。中3日のアウェイです。
福島はこの時点で18位、勝点8。順位だけ見れば勝たなければいけない相手ですが、大谷幸輝はこう話していました。
福島さんは球際のバトル、真ん中にどんどんボールを通してくるチームだと思っています。そういうチームに対して自分たちが今どれだけやれるかを、3日しかありませんが、いい準備をして連勝して帰ってこられるようにしたいと思います
吉田晃盛も平松昇も、同じことを言っています。「ここで連勝することがすごく大事」「今日の試合のことは忘れて、奈良戦で出た課題を思いっ切り福島戦にぶつけたい」。
そして田中監督は、総括の最後をこう締めていました。
点差では3-1という形になりましたが、逆になっていても、もっと点差が開いていてもおかしくない展開だったと思っています。まだまだ足りない部分、成長しなければいけない部分はたくさんあると思っています
勝った日に、きちんとこう言う。信頼できる監督だと思います。
溝上トメさんのメッセージを借りるなら、「まけるな」。
次は水曜、福島です。
※スタッツはJ.Leagueサイトのスタッツ(Opta集計)に基づく、試合直後の数値です。J.League公式の試合記録ではシュート数が北九州12本・FC大阪9本と異なります(PKの計上差と見られます)。またオフサイド数は2系統で数値が逆転しているため、本稿では使用していません。
※J3リーグはゴール期待値(xG)・クリア・タックル・ブロック・クロス・走行距離などが公開されていません。
※4つの得点すべてについて、J.League公式にアシストの記録はありません(J3はアシストを公式記録として公表していません)。1点目の「吉長真優→安光将作」という組み立て、および3点目で高昇辰が折り返したという経緯は、いずれも中継映像からの記述です。
※74分のPKでハンドを取られたFC大阪の選手、79分のPKにつながるファウルを犯した北九州の選手は、公式記録・報道とも選手名を明記していません。
※第11節は10月18日に4試合を残しており、順位表は暫定です。

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