内容は、悪くなかったんです。
奈良クラブは、4連勝で乗り込んできた
2026年10月10日(土)14時、ロートフィールド奈良。明治安田J3リーグ第10節、奈良クラブ戦です。
北九州はリーグ戦の直近3試合で2勝1分。第7節の相模原戦で今季初勝利を挙げてから、負けていません(12,707人の前で、リーグ戦ホーム初勝利|北九州 2-0 高知)。遅まきながら、勝点を積み上げ始めたところでした。
ただ、相手の調子が尋常じゃなかった。
奈良クラブは、この試合までリーグ戦4連勝中。しかもJリーグ公式のプレビューによれば、この4連勝はJ参入初年度の2023シーズンに並ぶクラブ記録で、この日勝てば記録更新という一戦でした。開幕2連敗のあと、7戦負けなし。
つまり北九州は、相手のクラブ記録更新がかかった試合に、アウェイで乗り込んだわけです。この勢いを止めておきたい、というのが正直なところでした。
ロートフィールド奈良に2,084人
この日の入場者数は2,084人。奈良の今季ホーム平均(この試合まで)が2,503人なので、少し下回りました。
天候は晴れ、気温26.8℃、湿度50%。10月とは思えない暖かさです。主審は本多文哉さん。キックオフは14時03分でした。
先発は2人変更。吉長と西村が入った
北九州の先発は、前節の高知戦から2人変更。原康介と吉田晃盛が外れて、吉長真優と西村真祈が入りました。
布陣は4-4-2。GK大谷幸輝、最終ラインは福森健太・横窪皇太・神橋良汰・安光将作。中盤に坂下湧太郎、平松昇、髙橋大悟、吉長真優。前に高昇辰と西村真祈。
対する奈良は4-2-3-1。GKマルク ヴィト、最終ラインに吉村弦・生駒稀生・奥田雄大・吉田新。中盤に川西翔太と森田凜。前に佐藤諒、富樫佑太、川﨑修平、そして1トップに安藤陸登。こちらは前節から1人だけの変更でした。
前半のシュートは、北九州が6本で奈良が2本
そして始まってみると、押していたのは北九州のほうでした。
6分、この試合1本目のコーナーキックを獲得。こぼれ球に反応した横窪皇太が枠内へ。続いて西村真祈もペナルティエリア内からシュート。13分に平松昇、18分に髙橋大悟(これはマルク ヴィトにセーブ)、29分に坂下湧太郎。
一方の奈良は、10分の時点でまだシュートゼロ。Optaも「10分が経過するも、まだシュートに至るシーンを作り出せない」と出していました。
とくに6分は、この試合でいちばんいい時間帯でした。コーナーキックからこぼれ球を横窪皇太が枠内へ、続けて西村真祈もエリア内から。短い時間に2本、立て続けに打っています。ここで1本入っていたら、90分の中身はまるごと変わっていたはずです。
この日の先発2人の変更──吉長真優と西村真祈──も、悪い入り方ではありませんでした。西村は6分にシュートを打ち、吉長は53分にペナルティエリア内から枠内へ飛ばしています。結果は出ませんでしたが、仕事はしていました。
前半終了時点の数字がこれです。
| 前半終了時点 | 北九州 | 奈良 |
|---|---|---|
| シュート | 6本 | 2本 |
| 枠内シュート | 2本 | 2本 |
シュート数で3倍。「互角に戦っていた」どころか、前半は北九州のほうが押していたというのが数字の答えです。
ところが、スコアは0-1で折り返しました。
25分、富樫佑太の一撃
先制したのは奈良でした。
自陣から左サイドでカウンター。その流れで川西翔太がクロスを入れ、ゴール前ニアサイドで富樫佑太が合わせました。25分、0-1。
Optaの記録は「富樫がペナルティエリア内から右足でゴール下に決める」。ニアに走り込んで、右足で流し込んだ形です。
この直後、Optaがこんな数字を出していました。
今季のリーグ戦、先制に成功した試合は5試合。4勝1分け0敗で勝率は80.0%
奈良は、先に点を取ると落とさないチームです。しかもホーム。この1点で、スタジアムの空気が一気に奈良のものになりました。
奈良の前半のシュートは、この得点を含めて2本。2本とも枠内で、そのうち1本が入っている。そういう前半でした。
後半3分、いちばん嫌な時間帯に
さあ後半で巻き返し、と思った矢先でした。
後半3分(48分)、奈良がセンターサークル付近から富樫佑太→森田凜→安藤陸登と真ん中をつないで、最後は大谷幸輝もかわして流し込みました。0-2。
Optaの記録は「安藤がペナルティエリア内から右足でゴール右下に決める」。
ハーフタイムで立て直して、さあここから、という3分です。いちばん嫌な時間帯でした。
決めた安藤陸登は、この2日前(10月8日)にJ3の月間ヤングプレーヤー賞を受賞したばかりの選手です。受賞直後の試合で、きっちり決めてきました。
そこからの北九州は、よく戦っていた
0-2になってから、北九州は交代カードを惜しまずに切っていきます。
| 時間 | OUT | IN |
|---|---|---|
| 57分 | 西村真祈 | 吉田晃盛 |
| 57分 | 坂下湧太郎 | 井澤春輝 |
| 68分 | 高昇辰 | 原康介 |
| 68分 | 吉長真優 | 平原隆暉 |
| 76分 | 福森健太 | 吉原楓人 |
76分で5人を使い切っています。追いかける姿勢という意味では、これ以上ない采配でした。
チャンスも作っています。53分に吉長真優がペナルティエリア内から枠内へ。67分に井澤春輝と安光将作が立て続けにシュート。85分には平松昇がエリア外から枠内へ。88分には井澤春輝のシュートがブロックされました。
ただ、枠に飛んだボールは、ことごとくマルク ヴィトに止められました。
18分の髙橋大悟、53分の吉長真優、85分の平松昇。そしてこのあとの90分も。
この奈良のGKマルク ヴィトも、安藤陸登と同じ10月8日にJ3の月間ベストセーブを受賞したばかりです。受賞者2人に、それぞれの形でやられた試合でした。
こういうとき、よく「決定力がない」という言葉が出てきます。でも、この試合に関してはちょっと違うと思っています。
北九州の枠内シュートは6本。奈良の8本と、そこまで大きな差はありません。打つところまでは行っているし、枠にも飛んでいる。止められたのは、相手のGKが月間ベストセーブを獲る調子だったからです。
問題はむしろ、その6本をどの時間帯に打ったかでした。前半に枠内2本、0-2になってから4本。0-0のうちに枠内2本しか作れなかったことのほうが、この試合の中身を説明しています。
90分、吉原楓人のPK
それでも、最後にチャンスは来ました。
90分。吉原楓人が左サイドから中に仕掛けたところで倒されて、PKを獲得します。
キッカーは、倒された吉原楓人。76分に投入されたばかりの選手です。
蹴ったボールは、マルク ヴィトにセーブされました。
入っていれば1-2。残り時間はわずかでしたが、終わり方はまったく違うものになっていたはずです。
そのまま試合終了。0-2でした。
数字で見る90分
試合全体のスタッツを並べます。J.League公式の試合記録と、J.Leagueサイトのスタッツ(Opta集計)でシュート数が違うので、両方載せます。
【J.League公式の試合記録】
| 項目 | 奈良 | 北九州 |
|---|---|---|
| シュート | 9本 | 8本 |
| コーナーキック | 6本 | 5本 |
| フリーキック | 10本 | 11本 |
【J.Leagueサイトのスタッツ(Opta集計)】
| 項目 | 奈良 | 北九州 |
|---|---|---|
| シュート | 12本 | 12本 |
| 枠内シュート | 8本 | 6本 |
| ボール支配率 | 52% | 48% |
| コーナーキック | 6本 | 5本 |
シュート12対12。枠内も8対6で、極端な差はありません。ボール支配率も52対48。
数字だけ見れば、ほぼ互角の試合です。それで0-2でした。
ただ、シュートの「出方」を時間で追うと、別の景色が見えてきます。
| 時間 | 北九州(枠内) | 奈良(枠内) |
|---|---|---|
| 20分 | 4本(2) | 0本(0) |
| 40分 | 5本(2) | 1本(1) |
| 前半終了 | 6本(2) | 2本(2) |
| 65分 | 7本(3) | 4本(3) |
| 85分 | 10本(4) | 11本(8) |
| 試合終了 | 12本(6) | 12本(8) |
65分の時点では7対4で北九州が上回っていました。それが85分には10対11で逆転されています。
この20分間で、奈良が7本。そのうち80分から82分のわずか3分間で5本です。一村聖連、森本ヒマン、生駒稀生、奥田雄大、増田隼司。2点リードした状態で、交代選手が次々と打ってきました。
互角だったのは前半と、後半の最初の20分まで。2点差がついたあとの時間に、差が出ました。
安光将作の連続ゴールは、3で止まった
もうひとつ、この試合で止まったものがあります。
安光将作の3試合連続ゴールです。
| 節 | 日付 | 相手 | 安光将作 |
|---|---|---|---|
| 第7節 | 9/20 | 相模原(A) | 1ゴール1アシスト |
| 第8節 | 9/26 | 鹿児島(H) | 1ゴール |
| 第9節 | 10/3 | 高知(H) | 1ゴール |
| 第10節 | 10/10 | 奈良(A) | — |
この日はセンターバックとしてフル出場。67分にペナルティエリア内からシュートを打ちましたが、枠をとらえられませんでした。
9月中旬の加入から3試合連続というのが異常だっただけで、止まったこと自体は普通のことです。ただ、安光が決めた3試合は2勝1分で、決めなかったこの試合が負け。そのくらい、この人に点を頼っていたということでもあります(加入4日でデビュー、1ゴール1アシスト。ようやくのリーグ初勝利|相模原 1-2 北九州)。
警告は、6分の福森健太
カードは少ない試合でした。
| 時間 | 選手 | チーム |
|---|---|---|
| 6分 | 福森健太 | 北九州 |
| 90+5分 | 奥田雄大 | 奈良 |
両チーム1枚ずつ、退場はなし。ただ福森健太の警告が6分というのは、やや重たい材料でした。左サイドバックが開始早々にカードを持った状態で80分近くを戦うことになります。結果的に76分に交代していますが、ここまで無理をさせられない時間が長かった。
奈良には3連敗。通算成績は五分に戻った
奈良クラブとの過去の対戦成績を並べます。
| 日付 | 会場 | スコア |
|---|---|---|
| 2023/6/11 | ミクスタ | 北九州 1-1 奈良 |
| 2023/8/6 | ロートF | 奈良 0-1 北九州 |
| 2024/6/16 | ミクスタ | 北九州 2-1 奈良 |
| 2024/8/24 | ロートF | 奈良 0-2 北九州 |
| 2025/7/5 | ロートF | 奈良 4-0 北九州 |
| 2025/8/16 | ミクスタ | 北九州 0-1 奈良 |
| 2026/10/10 | ロートF | 奈良 2-0 北九州 |
この試合までは北九州の3勝1分2敗で勝ち越していましたが、これで3勝1分3敗の五分になりました。
そして2024年8月以降、奈良には3連敗です。2025年7月のロートFでは0-4。相性がいい相手ではなくなってきました。
奈良の5連勝は、クラブ新記録になった
この勝利で、奈良クラブはリーグ戦5連勝。2023年のJ参入初年度に記録した4連勝を抜いて、クラブ新記録になりました。あわせて8戦無敗です。
順位も6位から3位へ浮上しました。
その相手になってしまった、ということです。悔しいですが、この日の奈良は強かった。認めるところは認めたいと思います。
15位のまま。次はミクスタでFC大阪
北九州はこれで2勝4分4敗、勝点10。順位は15位のままです。
| 順位 | クラブ | 勝点 | 得失点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 鹿児島ユナイテッドFC | 23 | +9 |
| 2 | 愛媛FC | 20 | +12 |
| 3 | 奈良クラブ | 20 | +5 |
| 4 | SC相模原 | 18 | +6 |
| 5 | FC大阪 | 17 | +9 |
| … | … | … | … |
| 15 | ギラヴァンツ北九州 | 10 | -6 |
そして、リーグ戦の4戦負けなし(2勝2分)が止まりました。せっかく上向いていたところだったので、ここは素直に悔しい。
次節は10月17日(土)14時、ミクニワールドスタジアム北九州でFC大阪戦です。相手は勝点17の5位。4勝5分1敗で、10試合を戦って失点はわずか9。引き分けの多さが示すとおり、簡単には点を取らせてくれないチームです。
ただ、ミクスタでは前節、1万人を超えるお客さんの前でリーグ戦のホーム初勝利を挙げました。あの日の空気をもう一度、という試合になります。
内容は悪くなかった。それは本当にそう思います。
でも、2点差という結果も事実です。次はミクスタで、結果のほうを取りにいきましょう。
※スタッツはJ.League公式の試合記録およびJ.Leagueサイトのスタッツ(Opta集計)に基づく、試合直後の数値です。J3では後日修正が入ることがあります。ゴール期待値(xG)・クリア・タックル・走行距離などは本稿執筆時点で未公開です。
※1点目のクロス(川西翔太)、2点目の組み立て(富樫→森田→安藤)、および90分のPK獲得の場面は、いずれも中継映像からの記述です。J.League公式記録にアシストの記録はなく、PKについては公式記録・Optaともに記録がありません(90分の場面は「吉原がペナルティエリア内から枠内にシュートを放つも、マルクヴィトにセーブされる」と記録されています)。
※監督・選手コメントは、本稿執筆時点で両クラブ公式・J.League公式とも未掲載です。公開され次第、追記します。

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